高機能自閉症、アスペルガー症候群の理解と援助

あいち小児保健医療総合センター 杉山登志郎先生

主催 自閉症・発達障害支援センター ありそ
2002.9.28 富山県小杉町ラポールにて

(書き留めた事や記憶に頼っています 断片的にしか書けない物で
誤解を招く可能性もある物は書いていません)
 
 

最近の自閉症発生率調査

英国 0.9%  Wing1996
日本 0.9%  冨田1998
日本 1.7%  河村2001

*現在約半数が高機能群だそうです
 

高機能自閉症は障害に認定されるか否かの境目に居る
(現状では不適応を起こしてどうにもならないような状態になった時
状態が悪い時以外では手帳の取得は難しいと思います)

手帳を取得し障害者枠で就職した方の給料と一般就労した方との賃金差
不景気な事も有り障害者枠で大企業に就職した方の方が多かったそうです
(障害者枠での就労の狭き門もよく聞きますが)
 

学校での高機能自閉症、アスペルガー症候群
いじめに対しては学校に介入を行ったら減った やはり多い傾向にある
心の理論通過後に表面的なトラブルは減少する傾向になる
学校では座ってなければならないという状況によってファンタジーに入りやすくなる
 

青年期の問題
不登校と家庭内暴力は幼児期から治療を続けてきたグループでは少ない
統合失調症は自閉症の病理の延長線上に生じた物がかなりの割合で含まれる
解離性障害は自閉症では珍しく無い 
青年期の自己同一性障害もよく起こる
青年期に障害告知のやり直しを行う事も必要になってくる
『己を悩む高機能自閉症児』自分と他人との違いを認め悩みだす
(こうなる前に告知が必要だと考えています)

ローソンの『私の障害、私の個性』がとてもいい本だと紹介されました(ご本人の自伝)
会話が苦手なのは一度に1つのことしか消化出来ないから
(1つについて考えているとまた次の話題になりついていく事が出来ない)
ドナ・ウイリアムズが来日した時の講演の事を話されていました
彼女も一度にわっと話されると混乱してしまう方
何かが気になるとそこから意識が離せなくなってしまう
これもドナ・ウイリアムズの例を引き合いに出されていました
(まるで我が子の様子のよう・・・)

幼児期には情報の洪水状態で立ち往生している
幼児期の耳は調整の効かないマイクロフォンのようであり雑音の除去が出来ない
 
 

森を見て森と見る  一般人
木を見て森を見ず 精神科医
一枚の葉が見えてしまう  自閉症

自閉症の人は全体のごく一部を手掛かりにして判断を行っている
認知の穴への対応が専門家の役割になる
 

好ましくないこと
放置は最悪 自由保育もしかり
2週間に1度程度の療育は意味をなさない

早期療育の効果についても話が有りました
 

子供への接し方
一度に複数の物を提示しない
過敏性に対する配慮をする
短く、ゆっくり伝える
 

印象に残った事

・学校に入ってからIQが上がらないのはその教育方法に問題が有るから

・教育関係者は本人の自伝位は読むべきだ 読まないのは本人に対して失礼だ

・診断を受け向き合う事の大切さ 子供のその後が変わってくる

・早期療育を受ける事で学齢期には受動型になってくる事が多い

・現在就労は8割、全例安定就労
 (アスペの会でフォローを受けてきたお子さん対象)

・現在アスペルガー症候群の犯罪が目立ってきているが
 世界的にはアスペルガー症候群の方が加害者の殺人事件は3件しか起きていない
 日本でここ数年で何件も起こるのは日本でこの障害に対してのフォローが
 いかになされていないかに起因する
 
・慣れが生じない 作業能力は高い人が多い(同じことを長時間していても平気)

・自閉症の人は現在と過去がモザイクのように混在している
 (時間認知の独特さ)

・インターネットの白い背景に黒の文字は読みづらい事がある
 (コントラストが強すぎる)

・T.グランディン氏の例で教室の境目が分かったのが12歳の時
 (空間認知の独特さを感じました よくある話ですが)
 

北陸の療育事情を心配されてか、辛口なお話が目立った感じがしました

支援の大切さを投げかけるお話だったと思います
とてもいい先生でした
講義を聴いているような・・・考える事有り、笑い有りのとても充実した時間でした
 

*先生の診察は(初診)現在2年半待ちだそうです
 

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