去年の夏のドナウィリアムズさんの講演のメモをまとめてみました
(2001.1.8公開)
 

(2000年8月9日大阪朝日生命会館ホールにて 10:00〜18:00 多少時間延長)

高機能自閉症の人からの提言 ドナ・ウィリアムズ女史

自閉症の3つの側面
1.感覚のシステム
2.関係の問題(単一である)
3.表出不安(間接的対面)
 

講演は休憩を入れながらほとんどドナさんが語られるという
思ってもみなかった展開となりました。レジメを見ながら話すという
形式でしたが、彼女も言われていましたが話は良く飛んでいました。
私のメモがこのまとめの元になっており彼女の話に忠実ではないかも
しれません。多少私の解釈が入っていることと思います。
 

1.感覚のシステム

自閉症の人には漏出性消化管症候群という消化不全の障害が多くの人に見られる
(彼女はこれを投薬により治療しているそう)
mgは糖分の代謝に使われる、糖分を摂り過ぎると欠乏する
欠乏した結果、不安が高まる

(レジメから)自閉症スペクトルの状態を持つ人の70%は漏出性消化管症候群を持っており
その結果不安に対応したり情報の合成に必要なビタミンB群やmgのレベルが低くなっている
これらの人の多くは肝機能の過負荷(毒性レベルに影響する)やすい臓機能(血糖値や血中
酸素濃度の極端な変動につながる)、並びに体が排出出来ない細菌・ウィルス負荷の再循環に
繋がる免疫不全など健康に関連した状態を有しており、入ってくる情報の速度に会わせ
深い情報処理をする能力に大きな影響を与えうる(引用終わり)

バッハフラワー療法という名称の療法が紹介されていました
ロックウォーター、花のエキスなどを使う療法で
チェリー・プラムエキス これはコントロールを解き放つ効果有り
ウォーターフラワーなど (全く解らない)
(ハーブなどでもリラックス効果の有るものは有るし、そんな感じ?)

情報処理に問題の有る場合(不安等)は糖分を減らすこと
体内のmgが減ってしまうのを改善する。

言葉はパターンとして聞いていた
意味は持たなかった=マッピングしていただけ
概念・・・判らない

外の世界(彼女の表現)はパターンでは無く、概念を絡めて
理解する事を要求される
外の世界との軋轢を感じる

コントロールされなければならないように感じていた
私達の世界は感覚の世界なのに

体に集中すると周りが見えない
周りに集中すると自分が見えない
で、パニックに
私は単一のシステムだから

自閉症を理解するには
自閉症は単一のトラック(音楽に限って言えばモノラル)
周りはマルチトラック(ステレオ)と考えればいい

周りは直接的対面、間接的の中にも直接的なことがたくさん有る
対面を私達が迫られるととても苦痛

相手が自分に苦痛を与えるとどうでもよくなってくる
自閉症という言葉からはこれらのことが判らない(何度も言われる、とっても同感)

自閉症とアスペルガ―の違い
自閉症の場合感覚で苦労が有る
アスペルガ―だとこれは見られないのでは?
でも言葉の理解が表面的(文字通りに意味を求めようとする)だったり
「どうしてそうなのか」「それが一体何なのか」などが苦手
(この辺りはやはり自閉症に通じていますね)

9歳ぐらいまで見ること、聞くことはパターンで全て理解していた
ただそれらの意味は解釈していなかった
解釈はそれから始まり、相当遅かった

全ての物事を感覚で理解しようとしていた
例えば長さの間隔を歩数を数える事で
(高さも説明が有ったのですがメモが取りきれていません)

高い能力であっても「意味の解釈」は必要ないように思えた
感覚システムの言語と実際の言語、知覚、概念が一致しない

「そんなドロドロの水にしないで」幼児期の口癖
どうしてみんなが色んなことをゴッタに出来るのか判らなかった
それは私にはとても辛かった

私達の見る世界は限られている
もし知りたければ
こころと頭はポケットへ
後は自閉症の人が教えてくれる(ここで通訳の方を気遣う。長い通訳になった為か)

他の人がコントロール権を持っていると感じると自分のチャンネルを
勝手に変えられている感じで地獄に思える

7年はずっと走っていたような状態だった(生まれてからだったか?)
視覚に関して、目で聞こえる音楽というのが有った

知ることには2つの場所
頭―意識的に知る
感覚―眠っているけど覚醒している(自閉症の場合?)
自分が意識していない深い層が有る
それに気付くと「よかった!私はクレバーだ」と思う時が有る。

最初の本を書いていた時自分中から外に出さなければならない重圧を感じていた
書くことで何が出てくるかは判らなかった
そして出てきた内容の深みに自分で圧倒されていた
外の世界が自分に与えたことを出そうと書いたので
不要なことを出せなくなった

出来あがった物には痛みを感じているので「すごいわね」は要らない

この世界は単一の関係ではなく、目を明けたら別の惑星に連れて来られていた
「ようこそドナ、こちらの世界へ」
何度も何度も大きなショックを受けてそして乗り越えてきた

混沌とした状態を阻止するということ、自分が少しゆずって周りが満足していた
欲していたのは私の方から与えたい、私の方から知りたいという気持ちが
有れば・・・

私達は自分の世界を尊重し、相手の世界も尊重していると
言われたのはこの時だったか
関わるのは私達の流儀では無いということを言われたと思う

絶望感からこちらから歩み寄ろうと思ったがこれは大変難しかった

かけはしを少しづつつけてあげて欲しい(周囲との)

人の名前は必要無かった 人の感触を感じるから

人は「これ気にいった?」と聞くが様子を見れば分かるだろう
人に何か見てもらいたい時にでも置いていくだけでもひとつのちゃんとした意思表示である
皆さんは『頭で考えるという障害』を持っているのです(会場大笑い)

解釈のシステムが急に進むとまたひとつ前に戻ってしまうことが有る
自分で得た解釈だけど、これだけでは信じることが出来ない

感覚で解釈の使い方を理解し、ある程度解釈のシステムが進んでから先に進める
(これはひとつひとつ段階を踏むらしい)
(これは娘に対して良く思っていた事のひとつです。伸びて後戻り。。。しばらくして
普通に戻りまた伸びては後戻りを繰り返しています)

日本の自閉症の方を紹介する時に
『気付かずにいたことを言うことによって気付くということがどういうことなのか
推し量ってもらいたい』と言われていました。
(2人の対談も有ったのですがこれはHTMLにしていません。その予定も無いです)
 

2.関係の問題(単一である)

システムオブセンシング(感覚のシステム)と関係の問題に付いては
私のHPに有るのでご覧になって欲しい(これが今回の3つのテーマのうちの2つ)

物事をバラバラではなく、間に目で見えないつながり(でメモが途切れています)(健常の場合のことのよう)
私の場合文章が音として聞こえてくる・・・・・自己―他者の理解が難しい
あまりにも忙しい時単一チャンネルになる
チャンネルは多く働いているはず自分も他者もONのはずだけど

複数だと疲れるので何か一つを働かせる
自分をONにすると他者をOFFにする

考える範囲が違う 大きな四角の中に小さな○がたくさん有る場合
○はひとつひとつであり、まとまったものには見えない

たくさんのチャンネルを使って解決しようとするのに
コントロール権を取られると(と言われる)パニックに
混沌としているから秩序を求めるのに

情報処理の遅れが有るのに周りは次々と違うことを言う
全てを取り入れようとするから理解が遅れる
捨てる所は捨てないといけない(これが出来にくいということ)
全体を見ないことで見えてくることも有る

鏡の前で自分の行動を映してみると他の人がしているように思え
他者の目を意識出来る

私に対する望ましい接近の方法は
ドナ・・(2秒)・・私は○○です、はじめまして・・(2秒)・・これ(と言って見せたい物を置く)
・・(2秒)・・これを見せたかった・・(2秒)・・ここに置いておくね

(普通は「ドナ!会いたかったわ!!これをあなたに見てもらいたかったの!!見て!!」となる)

周りの声はカナキリ声に聞こえてた
全然解らない言い方だった
何を言っているか解らなくて叫んでいた
私の気をふれさせたくてわざと言っていると思っていた

情報が過多だから混乱している
単一のアプローチにして欲しい

ゆっくりにすると遅れを取り戻せる

情報が少ないとなんとか処理出来る
どのチャンネルをオンにするか、オフにするか本人が解るといい
やり方を単一にする

視覚に刺激が多いと情報を処理しきれなくなる
(例えばパーティの時に敷いてあったカーペットの模様が複雑な模様
だったりすると気を取られてしまう)
音に過敏なら別の部屋へ
ライトも消す
換気扇がONになったとたん「あれ?私はエレベーターの中にいるのかな?」
と錯覚した
外に出て「換気扇だったんだ」と解った

情報のシャットアウトが出来なかった
光りの多さ 雑音の情報過多

兄弟で写真を撮ろうということを提案された時
笑いたいのに笑う事が出来なかった
「こっちを向いて」と言われると向けない

色付き眼鏡の効用
より直接の接触がやりやすくなっている
(失礼ながら私は観衆が彼女の方を一斉に注目するのに耐えられるのだろうかと思っていた
初めて来日し講演された時というのは本当に大変だったそう。もう日本の『拍手』にも
慣れられたそうで見た目には過敏さが全く解らないほど普通でした)

自分の声の音量を上げられない
伝えたいのに体面的に表出するのが難しい

気付いた事を気付かせるーコミュニケーション、わかちあいがそれ
 

3.表出不安(間接的対面)

つかまえられる―逃げる―また追い掛けられるの繰り返しのイメージ
友達、クリスは不思議がるがしたいと思うと出来なくなる
(今回の来日に同行されていた方で婚約者の方だそう)
したくないのならいくらでも出来る
する事への聴衆がいると迂回したくなる
『トイレに行きたい』と思うと行けない
そういう時『自分でない人が行きたいのだ、だから行こう』で行ける

「これこれこうして」と言われるほどやりにくい
「他の人のためにするんだ」で出来る

自分の為に動くのに大変時間が掛かる
「ティータイムにしよう」と思ってから実際にお茶を飲むまでに6時間
1杯のお茶に6時間掛かる

「どうだった」「よかったね」など直接的に迫られると拒否して横を向きたくなる

「おいしい?」より「ドナは気に入ってるみたいだね」
ほめてくれたり、名前を呼んでくれたら殴りたくなるような
強い矛盾を感じている

『何について』・・・○  『誰について』・・・×
直接話そうとするとシャットアウトしようとする
他のことを言おうとしてしまう

横にいて先生が自分に対してひとりごとを言う
それに対してドナも自分に対してひとりごとを言う
物に話し掛ける→物に対して返す(対話成立)

直接的さを押さえてくれたら言いたいことを言える力が増える

ダメ、ダメといわれるとそちらに走ってしまう

やめさせようとするのではなく一緒にしてみると意識する
自傷の時人に叩かれると気付き止まる
腕を出し「やさしく噛みなさい、やさしく」で噛むのを止める

否定ではなく肯定が力を持つ

ダメは直接的過ぎて混乱してしまう
自立が目的なら、服従が目的でないなら・・・・

体を通して感覚が分かると体を楽しめる

表出不安をとりのぞく、重要なこと

段階によって上手くいっていたことが上手くいかなくなることもある

秘密の言葉を持っていた
こういった言葉を止めさせようとすると表現すら止めてしまう
自分だけの言語に戻る

絵があった
友人と見に行った時一枚の絵に魅せられじーっと見ていた
友人は「ドナ、あなたライオンの絵が気に入ったの?」
「・・・ライオン?」
言われてよく見ると確かにライオンの絵だった
とたんに恥ずかしくなった
部分的に見ていてここがいい、ここもいいと感じていただけで
ライオンの絵とは見えてなかった

言語の断面が小さいほど全体が見えやすい

理解しても橋渡ししてくれる人は少ない
 

sipponaより
夢中でペンを走らせメモを取っていましたが(手書きメモなので)
抜けているエピソードなども有ると思います。

彼女は理解して欲しいということ、自閉症という名称では
自閉症の抱えている様々な困難が解らないと何度も
言われていました。

私自身今まで謎だったことがなんとなく繋がったような気になりました。
関係という物への理解が難しく単一であるということはこれからも
何度も自分に言い聞かせないと、と思います。

あと物事の理解がゆっくりでないと難しいということも・・・・。

彼女はとても繊細で美しく、そしてサインなどにも(休憩の時間を割いてまで)
出来る限り応じておられました。(実は私も・・・サインには顔のイラストが。
何かお話したいと思ったのですが、私も繊細なもので・・・(?))

本当に長時間立ったままよく講演されたものです・・・。
竹田先生は最後にホテルでバタンキューでしょうと言われていましたが・・・。

大阪講演の翌日は京都観光を楽しまれる予定だと言われていましたが
あの京都の蒸し暑さは大丈夫だったのでしょうか?

色んなエピソードひとつひとつがとても納得のいくもので『理解』はかなり深まった
ように思います。特に『関係が分からない』『私たちの世界では「関係」は存在
せず全ての物事が単一』というのは自閉症理解に欠かせないと思っています。
そう考えると「ああ、なるほど」と思えることがたくさん有ります。
講演は1万円以上もするいいお値段でしたが、彼女に会えて本当に良かったと
思っています。この講演を個人的に行かれて勉強された療育施設の先生なども
きっと多くおられたのでしょうね。

見た目は全くノーマル。だけどその内面の困難さに対して理解を得たいと
思うようになりました。(これが親身に接して下さる方にはたやすい事なの
ですが、かなり勉強しようと思わないと理解出来ないのがネックですが・・・)
彼女はそれを自分自身でされています。大変だったでしょう。でもその結果
とても皆が理解を示してくれて私は幸せな(恵まれた、だったかな)
自閉症者だとそう言われていました。
 

講演のビデオ化については
国際治療教育研究所 info@iiet.co.jpまでお問い合わせ下さい
(希望される方が多ければ作成されるような感じでした
問い合わせていないので発売されたかどうかは分かりませんが・・・)